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BLACKROCK INVESTMENT INSTITUTE

ネットゼロへの移行を管理する

リサーチの概要

世界の脱炭素化への移行は進行しています。2050年までに炭素排出量をネットゼロにする目標を達成できるかは、まだ定かではありません。ただ、脱炭素化への移行を無視する選択肢はもはや存在しないことは明らかです。企業と投資家の双方にとって、今後、脱炭素化への移行がどのように展開していくのか、見通しを持つことが、これまでになく重要になっています。

気候変動リスクは投資リスクであり、ネットゼロ経済への移行がどのように展開するかによって左右されます。企業とアセットオーナーは、気候変動の物理的リスクに加えてネットゼロ経済への移行にも取り組まなければなりません。炭素排出の削減に伴い、経済は再構築されます。移行には、大規模な資本の再配分が伴います。需要と供給が変化し、その過程でミスマッチが生じ、様々な企業で価値の創造的破壊が起きるでしょう。

移行はすでに始まっており、企業と投資家は、それがどのように進展していくか見通しを持つ必要があります。企業は、ビジネスモデルをどのように変更し、どこに投資するか、どの事業を段階的に廃止するかを決定しなければなりません。アセットオーナーは、長期的な経済利益を守るために、資本をどこに投入し、株主としての議決権をどのように活用すべきかを決定しなければなりません。

企業と投資家は大きな不確実性に直面しています。移行は進展していますが、その速度や道すじは不確実性が高く、結果は、社会における価値観の変化、企業の戦略、資本配分、新たな技術、政府の政策が複雑に絡み合って決まります。

エネルギーセクターは、最も厳しい深刻な課題に直面しています。再生可能エネルギーへの投資額の増加ペースは化石燃料の設備投資の削減ペースより遅く、移行に向けた動きは偏ったものになっています。この不均衡は、コロナ禍からの経済再開時にエネルギー価格の急騰につながり、無秩序な移行がどのようなものになり得るかを示しました。再生可能エネルギーの見通しは明るいものの、移行期中の世界のエネルギー需要を満たすためには、低炭素の化石燃料も必要になるとブラックロックは考えています。

移行による価値の創造的破壊が今、資産価格に織り込まれつつあります。ブラックロックは2年前、サステナビリティに向かう地殻変動的な変化によって資産価格の全面的なリプライシング(再評価)が起きると予想し、期待リターンとリスクの予測に気候変動を組み入れました。現時点ですでに織り込まれている形跡もありますが(8ページ)、この動きはまだ始まったばかりだと考えています。

移行の道筋によってマクロ環境が左右されるでしょう。民間資本と新興国への公的支援に支えられ、段階的で秩序立った移行が行われれば、資本の再配分が比較的スムーズに行われ、物価の上昇も緩やかになると思われます。急激で無秩序な移行は、需給のミスマッチ、インフレの急進、成長の阻害というリスクをもたらすでしょう。

気候変動への取組みは世界経済にとって差し引きでマイナスになるという主流の考えは間違っていると、ブラックロックは考えます。ネットゼロへの移行は経済成長を阻害するのでしょうか。インフレが進むのでしょうか。過去の経験に照らせば、そうなります。しかし、車のバックミラーに映った景色は前方に何があるかとは無関係だとブラックロックは考えています。気候変動は現実に起きていることです。秩序立った移行は、気候変動対策を行わない場合や、切羽詰まってから脱炭素化を急ぐ場合と比較して、経済成長を促進し、インフレを緩和するでしょう。

結論:企業と投資家は、ネットゼロへの移行を無視することはできません。企業と投資家は、これまで中国の経済成長や技術革新への対応を余儀なくされてきましたが、ネットゼロへの移行についても同じことが言えます。すべての企業と投資家が、移行によって事業や投資がどのように変化するかを理解し、経済の再構築に対処する必要があるでしょう。また、企業や投資家は、テーマ別投資やインパクト投資を通じて移行を推進したり、新たな技術に資金提供することで、ネットゼロの世界を創造することを選択することも可能です。

 

重要事項
当レポートの記載内容は、ブラックロック・グループ(以下、ブラックロック)が作成した英語版レポートを、ブラックロック・ジャパン株式会社(以下、弊社)が翻訳・編集したものです。また当資料でご紹介する各資産の見通し(米ドル建て)は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。 記載内容は、米ドル建て投資家を対象とした市場見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。

 

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