Photo of BlackRock’s Chairman and CEO, Larry Fink

ラリー・フィンク:投資家の皆様への年次書簡(2024年)

リタイアメントの再考

2012年に母が亡くなると、父も衰え始め、私と兄は両親の財産状況について整理を始めました。

両親とも素晴らしい仕事に就き、50年間働きましたが、決して高額納税者ではありませんでした。母は地元の州立大学(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校)の英語教師で、父は靴屋を経営していました。

彼らの年収がいくらだったのか正確には知りませんが、それほど多くの収入ではなかったはずです。だからこそ兄と私は、両親が老後に備えて貯えていた額を見て驚きました。両親の収入からすると、想像を超える桁違いの額だったからです。しかし、両親の財産を把握し終えて、その理由が分かりました。両親は投資をしていたのです。

父は昔から投資に熱心で、私が10代の頃、初めて買った株(デュポン社)は父の勧めからでした。父が投資をしたのは、債券や株式に投資をする方が銀行に預金するよりも早く資産が成長する可能性が高いことを知っていたからです。そして父は正しかったのです。

試しに計算をしてみました。もし両親が1960年にS&P500に1,000米ドルを投資していたとしたら、1990年にリタイアメントを迎える頃には、その1,000米ドルは20,000米ドル近くの価値になっていたでしょう。1 銀行口座に預けていた場合の2倍以上にのぼります。父は母の死の数ヵ月後、80代後半で亡くなりました。しかし、二人とも100歳を超えても余裕をもって生活できていたはずです。

なぜ両親について書いているのかというと、両親の財産状況を見ることで私自身の金融業界でのキャリアについて考えさせられたからです。両親が亡くなった時点で、ブラックロックを設立して25年近くが経っていましたが、この経験は私がパートナーたちとブラックロックを設立した理由を再度そして非常に個人的な形で思い出させてくれました。

もちろん当時の私たちは野心的な起業家で、会社を立ち上げて大きな成功を収めることを目指していました。しかし同時に、人々が私の両親のように十分な貯えをもってリタイアメントを迎えられるよう支援したいという思いがありました。そのために私たちは資産運用会社、つまり資本市場への投資を支援する会社を設立したのです。資本市場に参加することは、リタイアした後に経済的なゆとりと安定した生活を望む人々にとって非常に重要だと考えたからです。

私たちはまた、資本市場が世界経済の中でますます大きな部分を占めるようになると信じていました。より多くの人々が資本市場に投資できるようになれば、経済の好循環が企業や国の成長を促進し、ひいては多くの人々にも富が還元されます。

私の両親は晩年、幸運にも尊厳ある老後と経済的自由を手に入れましたが、誰もがそうではありません。しかし、それは可能なのです。両親の生きた時代と同様に、私たちが生きる今の時代も資本市場がそれを可能にするのです。資本市場の成長と繁栄を生み出す力は、21 世紀を通して常に経済の主要トレンドであり続けるでしょう。

この書簡でその理由を説明しようと思います。

Quotation start

両親が亡くなった時点で、ブラックロックを設立して25年近くが経っていましたが、この経験は私がパートナーたちとブラックロックを設立した理由を再度そして非常に個人的な形で思い出させてくれました。

簡単な(そして不完全な)米国資本市場の振り返り

金融ではお金を得る、あるいは増やすには2つの基本的な方法があります。

ひとつは銀行で、これは歴史的に多くの人々が利用してきたものです。貯金して利子を得る、ローンを組んで家を購入する、融資を受けて事業を拡大するなどがそうです。しかし、時が経つにつれて特に米国では、資本市場の成長とともに公開株式、債券、その他の証券等に投資するという第二の資金調達手段が生まれました。

1970年代後半から1980年代前半にかけて住宅ローンの証券化市場の創設に携わった私は、これを目の当たりにしました。

1970年代以前は、クリスマスの名作『素晴らしき哉、人生!』に出てくるように、ほとんどの人がビルディング&ローン(B&L)によって住宅資金を確保していました。

人々は貯蓄をB&Lに預け入れ、B&Lは実質的に銀行のようなものになっていました。そしてB&Lは、住宅ローンという形でその資金を貸し出しました。

映画では(そして現実でも)、銀行の前に預金の引き出しを求める人々が列を作り始めるまでは、すべてがうまくいっていました。ジミー・スチュワートが映画の中で説明したように、彼らのお金は銀行にはなく、誰かの家に紐づいていたのです。

大恐慌後、B&Lは貯蓄貸付組合(S&L)へと姿を変え、1980年代に危機を迎えました。1980年当時、全米の住宅ローン残高の約半分がS&Lによって保有されていましたが、リスク管理の不備と融資慣行の緩みから破綻が相次ぎ、米国の納税者は1,000億米ドル以上の損失を被りました。2

しかし、S&L危機は米国経済に永続的なダメージを与えませんでした。なぜなら、S&Lが破綻したのと同時に、別の資金調達方法が強化されていたからです。資本市場は、低迷する不動産市場に資本を戻す道を提供していました。

これが住宅ローンの証券化です。

証券化によって、銀行は住宅ローンを組成するだけでなく、売却することもできるようになりました。住宅ローンを売却することで、銀行はバランスシート上のリスクをより適切に管理し、住宅購入者に貸し出す資本を確保することができたため、S&L危機が米国の住宅所有に深刻な影響を与えることはありませんでした。

しかし、最終的には住宅ローン証券化の行き過ぎが2008年の市場の暴落の一因となりました。そして、世界金融危機は米国の住宅所有に打撃を与えました。現在、米国はこの時の打撃からまだ完全には回復していません。しかし、資本市場の拡大自体は、米国経済に非常にプラスに働きました。

なぜ米国は、他のどの先進国よりも早く2008年の金融危機から立ち直ったのでしょうか。3 その理由はよく考えてみる価値があります。

そして、その答えの大部分はこの国の資本市場にあります。

人々がほとんどの資産を銀行に預けていた欧州では、銀行がバランスシートの縮小を余儀なくされると経済が凍りつきました。もちろん、米国の銀行も資本基準を引き締め、融資を控えざるを得ませんでした。しかし米国には資本市場という、より堅牢な第二の資本プールがあったため、米国経済はより迅速に回復することができました。

現在、米国では非金融企業の資金調達の70%以上が公開株式と債券で行われており、これは世界のどの国よりも多くなっています。例えば中国では、銀行と資本市場の比率はほとんど逆転しており、中国企業は資金調達の65%を銀行融資に頼っています。4

これは近年の経済史において最も重要な教訓だと私は思います。繁栄を目指す国々には、強力な銀行システムだけでなく、強力な資本市場も必要なのです。

そして、この教訓は世界中で認識され始めています。

米国の資本市場の成功を再現する

昨年、私は17カ国を訪問し、多くの日数を外遊に費やしました。その際にお客様や弊社の従業員と話をする機会がありました。また、多くの政策立案者や国のリーダーとも会談しましたが、その中で最も話題に上ったのは資本市場についてでした。

米国の資本市場の強さに着目し、自国に資本市場を構築したいと考える国はますます増えています。

もちろん、多くの国には既に何らかの形で資本市場が存在します。クアラルンプールからヨハネスブルグまで、世界中に80ほどの証券取引所があります。5 しかし、そのほとんどは小規模で投資額も多くありません。そうした国々は米国のように、より堅牢な市場を形成することを目指しています。

例えばサウジアラビアでは、政府は住宅ローンの証券化市場の構築に関心を示しており、日本やインドでは国民に新たな貯蓄先を提供しようとしています。今日の日本では貯蓄の大半は銀行に預けられていますし、インドでは多くの人が金を貯蓄しています。

昨年11月にインドを訪問した際、国民の金好きを嘆く政策立案者に会いました。金市況はインドの株式市場をアンダーパフォームしており、投資先としては見劣りします。また、金投資はインドの経済成長に貢献しません。

金投資を、例えば住宅の購入と比較してみましょう。住宅の購入は、波及的な経済効果を生み出します。家具を買い、いずれは家の修理が必要になるかもしれません。または、家庭を持ち、子供が生まれるかもしれません。そのすべてが経済活動を生み出します。銀行にお金を預けても、銀行はそのお金を住宅ローンで貸し出すことができるので乗数効果があります。しかし金はどうでしょう。金は金庫の中に眠っているだけです。価値の貯蔵にはなりますが、金は経済成長をもたらさないのです。

これは、各国が堅牢な資本市場を通して成し遂げられることを示す、ほんの一例(別の言い方をすれば、資本市場なしでは達成できないことの一例)です。

現代の政治が反資本主義に傾いているにも関わらず、世界の多くのリーダーたちは、資本主義ほど多くの人々を貧困から救い、生活の質を向上させる力はないことを明らかに理解しているのです。資本市場以外に、経済的自由という私たちの最大の希望を達成するのに役立つ経済モデルはないのです。

だからこそ資本市場は、21世紀半ばにおける最大の経済的課題の2つに対処するための鍵となるでしょう。

  1. 一つ目は、私の両親が長い時間をかけて築き上げたもの、つまり安全で十分に蓄えのある老後を人々に提供することです。これは30年前よりはるかに難しい課題です。そして、30年後にはもっと難しい課題になるでしょう。人々の寿命は延びており、より多くの資金が必要になっています。政府と企業が人々の投資を支援すれば、資本市場はより多くの資金を供給することができるのです。
  2. 二つ目の課題はインフラです。世界が必要とする大量のインフラをどのように構築するのでしょうか。各国が脱炭素化と経済のデジタル化を進めるにつれ、通信ネットワークから新しい発電方法まで、あらゆる種類のインフラ需要が急増しています。実際、私が50年近く金融に携わってきた中で、エネルギー・インフラに対する需要がこれほど高まっているのを見たことはありません。それは、多くの国が2つの目標を掲げているからです。低炭素電源への移行とエネルギー安全保障の同時達成です。資本市場は、各国が脱炭素化などのエネルギー目標を実現可能なやり方で達成できるよう支援することができます。
Quotation start

リタイアメントは30年前よりはるかに難しい課題です。そして、30年後にはもっと難しい課題になるでしょう。

高齢化問題を考える:どうすれば長寿による資金枯渇リスクを避けられるのか。

昨年、日本は人口動態の節目を迎えました。日本では1990年代初頭から高齢化が進み、生産年齢人口が減少、高齢者人口が増加してきました。しかし、2023年には初めて人口の10%が80歳を超え6、国連によると日本は「世界最高齢国」となりました。7

日本政府が退職後の資金準備のための投資を推進しているのには、こうした背景があります。

ほとんどの日本人は、退職後のための資金の大部分を銀行に預け、低金利で運用しています。これは、日本がデフレに苦しんでいた時代には、それほど悪い戦略ではありませんでした。しかし、今や日本経済は好転し、日経平均株価は2024年3月に初めて40,000円を超えました。8

これからリタイアメントを迎える人々の多くは、この上昇気流に乗り遅れています。日本には2001年まで米国の401(k)(確定拠出年金)のようなものはなく、制度導入後も拠出額は少額でした。そこで政府は10年前、老後の資産形成に向けた投資を促すため、日本版個人貯蓄口座(NISA)を立ち上げました。現在、日本政府はNISAの加入者を倍増させようとしており、5年でNISA総口座数を3,400万口座に倍増することを目標に掲げています。9 そのためには、日本政府は歴史的に個人の参加が少なかった資本市場を拡大する必要があります。

より多くの国民が老後のために投資できるよう支援しているのは日本だけではありません。ブラックロックは、インドに本社を置くリライアンス・インダストリーズの金融部門との合弁会社、ジオ・ブラックロックを設立しました。過去10年間で、インドは巨大なデジタル公共インフラ網を構築し、約10億人の国民がスマートフォンで医療費の支払いから納税まで行えるようになりました。ジオ・ブラックロックの目標は、同じインフラを利用してリタイアメントのための投資などを提供することです。

結局のところ、インドも高齢化が進んでいます。スピードは違うものの、世界全体が高齢化しているのです。ブラジルは2035年までに退職者数が新規就業者数を上回り、メキシコは2040年までに、インドは2050年頃に労働人口がピークに達するでしょう。

高齢化が進む中、リタイアメントに向けた資金の準備が喫緊の課題に

人口に占める労働力人口の割合(2020年)

出所:Working-age population (ages 15-64): UN "medium trend"10

世界の人口は、2019年時点で11人に1人が65歳以上でしたが、今世紀半ばには6人に1人が65歳以上になります。11 高齢化社会に対応するために、各国政府は米国のように堅牢な資本市場を構築することを優先しなければならないでしょう。

しかし、これは米国のリタイアメント制度が完璧だと言っているわけではありません。誰もそうは思っていないでしょう。米国のリタイアメント制度は、少なくとも現状に即した対応をする必要があります。

米国におけるリタイアメントの再考

特に昨年は、バイオテクノロジー業界が延命効果のある新薬を大量に世に送り出したため、その傾向は顕著でした。例えば、肥満は人の寿命を10年以上縮めるリスクがあります。だからこそオゼンピックやウゴービのような新薬は、単なる減量薬ではなく延命薬になりうると考える研究者がいるのです。12 実際にオゼンピックの一般名であるセマグルチドは、心臓疾患を持つ人々が心臓発作のような重篤な状態に陥いる確率を低減することで寿命が2年延びるという結果が最近の研究から示されています。13

Quotation start

米国社会は人々の寿命を長くすることに多大なエネルギーを注いでいますが、人々の長寿を支えるための資産形成に費やされる努力はその何分の一にも満たないのです。

これらの薬は画期的なものですが皮肉にも課題も生み出しています。米国社会は人々の寿命を長くすることに多大なエネルギーを注いでいますが、人々の長寿を支えるための資産形成に費やされる努力はその何分の一にも満たないのです。

昔はこうではありませんでした。私の両親がリタイアした後に安定した生活を送ることができた理由のひとつは、母が州立大学の職員として加入していたカリフォルニア州の年金制度(カルパース)のお陰でした。しかし、年金加入者数は1980年代以降、全米で減少しています。14 その一方で連邦政府は、今の若い人々が将来リタイアした時にソーシャル・セキュリティ(社会保障年金)を満額で受け取れない可能性があるにもかかわらず、私のような年齢(71歳)の人々の受給権を維持することを優先しています。

ミレニアル世代やZ世代など若い世代が経済的に不安を抱くのも無理はありません。彼らは、私の世代、つまりベビーブーマー世代が自分たちの経済的な幸福に焦点を当て、後の世代を犠牲にしてきたと考えているのです。そしてリタイアメント制度について言うと、そのとおりなのです。

今日の米国では、政府や企業で働く人々に対するリタイアメント準備のメッセージは事実上、「自己責任」です。そして、私の世代が企業や政治の指導的立場から完全に姿を消す前に、私たちにはこの状況を変える義務があります。

米国では10年に1度ほど、政府や企業のリーダーが通常業務を停止するほど重大かつ緊急な問題に直面することがあります。彼らはそれぞれの担当業務から飛び出し、解決策を見つけるために同じテーブルを囲みます。私は2008年以降、政府が住宅ローン危機から生じた不良資産を取り除く方法を見つけなければならなかった時に、このような場に参加しました。さらに最近では、米国の半導体サプライチェーンの脆弱性に対処するため、ハイテク企業のCEOと連邦政府が協力しました。私たちは、リタイアメントの危機に対して同様のことをする必要があります。未来の世代が尊厳ある老後を過ごせるようにするために、米国は組織的で高度な取り組みを必要としています。

その取り組みとは何か。 私はすべての答えを持っているわけではありませんが、データとブラックロックでの経験から得たアイディアがいくつかあります。なぜなら、リタイアメントに向けた資産形成こそが、ブラックロックの中核事業だからです。

ブラックロックが運用する資産の半分以上はリタイアメントに関連するものです。15 ブラックロックは、約3,500万人の米国人のリタイアメント資金の運用をお手伝いをしていますが16、これは国の労働者の約4分の1に相当します。17 多くの人々は私の母のような教師であり、米国の公立学校においては、約半数の年金資産をお預かりしています。18 各国政府がリタイアメントの近代化の取り組みを考える時、ブラックロックが米国で行ってきたリタイアメント資金の運用や世界中で提供している同様のサービスからの経験が役立つかもしれないと思うのです。

私たちは3つの異なるレンズから課題を見ることで、この取り組みへの会話を始めることができると考えています。

  • 現役世代、つまりリタイアするまでに資金を蓄えようとしている人の立場から見た課題は何でしょうか。
  • 既にリタイアした人はどうでしょうか。リタイアしても生活できるだけの貯蓄はあるが、そのうち資金が底をつくのではないかと心配している人の視点から考える必要があります。
  • しかし、まず第一に米国のリタイアメント問題の全容を(国家の政策担当者のような視点から)俯瞰することが重要です。国民全体にとっての課題は何でしょうか。(それは人口動態です)。
Quotation start

若い世代は、私の世代、つまりベビーブーマー世代が自分たちの経済的な幸福に焦点を当て、後の世代を犠牲にしてきたと考えているのです。そしてリタイアメント制度について言うと、そのとおりなのです。

人口動態は嘘をつかない

「人口動態には逆らえない」という言葉は経済学で頻繁に使われます。しかし、リタイアメントの課題について、少なくとも米国はこれに抗おうともがいています。

豊かな国では、老後の生活資金を準備する方法として主に3つの柱を用意しています。ひとつは、個人的に投資するもの(私の父は株式市場に投資をしていました)。もうひとつは、雇用主が提供する年金制度(私の母が加入していたカルパース)。そして3つ目が、政治家がよく口にする「政府のセーフティネット」です。米国では、ソーシャル・セキュリティ(社会保障年金)がこれにあたります。

社会保障年金の仕組みについては、多くの方がよくご存じかと思います。社会保障年金を支給するために必要な財源を政府が現役世代の収入から一部徴収し、リタイアした人々は毎月小切手を政府から受け取るというものです。第一次世界大戦前にドイツで生まれた、この“老後保険”的な仕組みは当時の人口動態においてうまく機能したため、20世紀にかけて徐々に普及しました。

私が生まれた1952年に65歳だった人がいたとします。当時65歳だった人は、既にリタイアしていたでしょうし、もしまだ働いていたとしても退職を間近に控えていたでしょう。

では、1910年代に就職したその人の会社の同僚や同世代の人たちはどうだったでしょう。データによると1952年には、ほとんどの人はリタイアメントの準備をしていませんでした。なぜなら、ほとんどの人が既にそれまでに亡くなっていたからです。

社会保障年金が機能したのは、このような時代でした。社会保障年金を受け取るために働き、給与の一部を拠出した人々の半分以上がリタイアして社会保障年金を受け取る前に亡くなっていたのです。19

現在の人口動態は(長寿化で)当時とは全く違うものになっており、それ自体が喜ばしいことは言うまでもありません。より長生きできるように誰もが願っています。しかし、国家のリタイアメント制度に甚大な影響を及ぼしていることを看過するわけにはいきません。

より多くの米国人がリタイアメントを迎えているというだけではなく、リタイアメント後の人生も長くなっています。今、もしあなたが結婚していて、あなたと配偶者の両方が65歳以上であれば、少なくともどちらかが90歳まで社会保障年金を受ける可能性は五分五分です。20

これが米国のリタイアメント制度が逼迫している理由です。当事者の社会保障局でさえ、2034年以降は国民に満額は給付できなくなると見ています。21

解決策はあるのでしょうか。誰も自分が望む以上に長く働く必要はないはずです。しかし、65歳というリタイアメントの年齢基準がオスマン帝国の時代と同じように設定されているのは少しおかしいと思います。

人類はこの120年で変わりました。リタイアメントに対する考え方も変わらなければならないのです。

リタイアメント制度を見直した国のひとつにオランダがあります。最近の年金制度見直しの一環として、オランダは10年以上前にリタイアメント年齢を徐々に引き上げることを決めました。それ以降は、国の平均寿命の延びとともに自動的にリタイアメント年齢が変更されます。22

もちろん、この政策を他の国で実施することは、大規模な政治的事業となるでしょう。しかし、強調したいのは、私たちは検討を始めるべきだということです。90歳以上まで生きることが一般的になっている今、平均的なリタイアメント年齢はどうあるべきでしょうか。

あるいは受給開始年齢を引き上げるのではなく、もっと政策面からも受け入れられやすい案があるのではないでしょうか。労働を強いるのではなく、インセンティブをつけることで、もっと長く働きたい人を増やすことができるのではないでしょうか。政府も民間企業も、60歳以上の人たちをリタイアする人ではなく、多くのものを提供できるキャリア後期の働き手として捉えてはいかがでしょう。

日本が高齢化する経済に対応している方法のひとつが、まさにこれです。労働参加率を高める新しい方法を見つけたのです。この指標は2000年代前半以降、米国で低下しています。23 米国はどうすればこの傾向を止める(少なくとも遅らせる)ことができるかを問う必要があるでしょう。

繰り返しになりますが、私は答えを知っているふりをするつもりはありません。ブラックロックは何百万人もの人々のリタイアメントを支援してきましたが、こうした疑問はより幅広い投資家、退職者、政策立案者などに投げかける必要があります。今後数ヶ月間で、ブラックロックはそのための一連のパートナーシップやイニシアチブを発表する予定です。そして、この取り組みへのご賛同をご検討いただければ幸いです。

働く人々が投資を(ほぼ)自動的に行えるようにする

米国国勢調査局が2022年に消費者の財産に関する定期調査を発表した際、55歳から65歳の米国人の半数近くがリタイアメントのための資金として1米ドルも貯金していないと回答しました。24 年金にも、個人退職口座(IRA)にも、401(k)にもまったく貯えがないのです。

なぜでしょう。老後に向けた投資の最初の、そしておそらく最大の障壁は、経済的な余裕です。

米国人の10人に4人は、車の修理や病院での診察などの緊急時に400米ドルを支払う余裕もありません。25 今お金を持っていないのに、30年先の老後のために誰が投資をするでしょうか。そんな人はいないでしょう。そこでブラックロックの基金は、非営利団体と協力して緊急貯蓄イニシアチブを立ち上げ、主に低所得層の米国人を対象に合計20億米ドルを新たに流動性貯蓄に回すのを支援しました。26

非常時用の貯蓄があると、退職後に向けて投資する可能性が70%高くなるという研究結果もあります。27。しかし、ここで人々は別の壁にぶつかります。投資は、たとえ余裕があっても複雑なものだからです。

生まれながらの投資家などいません。金融サービス業界では時として、投資は複雑でないと思わせるような印象を与えているかもしれません。退職後の資金を貯めるのは簡単なことで、車の運転と同じように少し練習すれば誰にでもできることのように思わせています。キーを持って運転席に飛び乗ることはできます。しかし、退職に向けた資産形成はそれほど直感的にできることではありません。例えるなら、誰かがあなたの家の前にエンジンと自動車部品を投げ入れて、「あとはご自身でどうぞ」と言うようなものです。

ブラックロックでは、ターゲット・デート・ファンドのような分かりやすい商品を開発することで、投資プロセスをより直感的なものにしようとしてきました。退職するのは何年後かということだけ設定し、一度その「退職予定日」を決めるとファンドが自動的にポートフォリオを調整し、退職日が近づくにつれ、リターンの高い株式からリスクの低い債券へと配分をシフトしていくのです。28

2023年、ブラックロックはターゲット・デートETFの種類を増やし、雇用主が退職金制度を用意していない場合でも、働く人々がより簡単に投資できるようにしました。米国には、農業従事者、非正規労働者、レストラン従業員、契約社員など、確定拠出年金を利用できない人々が5,700万人います。29 しかし、より良い投資商品が助けになるとはいえ、ターゲット・デート・ファンドのようなものにできることには限界があります。実際、退職後の投資において、「始める」ということがほとんどの人にとって最も難しいことだというデータもあります。

パートタイムや契約社員に対して、よりシンプルな制度を設けている国もあります。オーストラリアでは、雇用主は18歳から70歳までの従業員全員の収入の一部を退職口座に拠出しなければならず、その口座は従業員の名義となります。スーパーアニュエーション保証制度は、オーストラリアが年金危機への道を歩んでいるとされた1992年に導入されました。それから32年後、オーストラリアは国民1人当たりの退職貯蓄額が他のどの国よりも多くなっています。人口では世界で54番目ですが30、退職貯蓄額では世界で4番目です。31

もちろん、国はそれぞれ異なるため、リタイアメント制度もそれぞれ異なるでしょう。しかし、米国の政策立案者にとってオーストラリアのスーパーアニュエーション保証制度は、自国の年金制度を再構築する上で研究に値する良いモデルでしょう。実際に既に導入している州もあります。コロラド州やバージニア州をはじめ、米国ではオーストラリアのように非正規労働者やパートタイム等のすべての従業員をカバーするリタイアメント制度を制定している州が20州ほどあります。32

議員たちが様々な法案を提案し、米国の20州が 「年金制度の実験室」になっていることは良いことですし、もっと多くの州が検討すべきです。莫大な恩恵を退職者にもたらす可能性があるためです。これらの新しいプログラムは、米国が長期的に社会保障年金を支払うための財源を確保する手立てになるかもしれません。オーストラリアでは、スーパーアニュエーション保証制度が社会保障年金制度の財政的緊張を緩和しています。33

企業の年金制度を利用できる人々はどうでしょうか。彼らにもサポートが必要です。

退職年金制度が用意されていても17%の従業員は制度に加入していません。退職年金制度の専門家は、これは意識的な選択ではなく、人々は忙しすぎて年金制度のことを考える時間がないとみています。

簡単なように思えるかもしれませんが、会社の退職年金制度の情報がどこにあるのか電子メールの受信トレイを調べ、給料の何パーセントを掛け金とするのか考えるということすら高いハードルになりえます。

だからこそ企業は、従業員にとってデフォルトの選択肢をどのようなものにするのかをよく考えなければなりません。社員は自動的にプランに加入するのでしょうか。自動的に加入した場合、いくら拠出するのでしょうか。そして、その拠出額は収入に対する割合の下限あるいは上限でしょうか。

2017年、シカゴ大学の経済学者リチャード・セイラー氏は、人々の金融生活に大きな影響を与える政策の小さな変化をテーマにした先駆的な研究(行動経済学)でノーベル賞を受賞しました。退職年金制度への自動加入はそのひとつです。加入を自動化するという単純なステップで、退職年金制度への加入が50%近く増加するという研究結果もあります。34

退職後資金の準備のための投資を従業員がより自動的に行えるよう、私たちはできる限りのことをするべきです。既に明るい兆しもあります。来年から施行される連邦法により、新たに401(k)を導入する雇用主は、新入社員を401(k)に自動加入させることが義務付けられます。さらに、ブラックロックを含む数百の大手企業が、既に自主的にこの措置を講じています。

しかし、企業には従業員を経済的に支援するためにできることがもっとあります。例えば、従業員の退職金積立にマッチング拠出をすることや、金融リテラシーを高める活動をもっと行うこともできるでしょう。退職金積立に収入の数パーセントしか拠出しなかった場合と上限額まで拠出した場合、その差は長期で見ると非常に大きなものになるためです。また、転職する際に401(k)を移行しやすくするべきだとも思います。他にもできることは多数あり、そのすべてを検討するべきです。

退職後資金をどう使うかをサポートする

2018年、ブラックロックは米国の退職者1,150人を対象にした調査を実施しました。そのデータを掘り下げてみると、逆説的ですらある予想外の現状が分かりました。

調査によると、退職後20年近く経っても、平均的な人の貯蓄額は退職前の80%を維持していたのです。彼らの年齢は、恐らく75歳から95歳くらいだったでしょう。退職後に備えて投資をしていれば、残りの人生には十分すぎるほどの資金があったはずです。しかし、このデータは、彼らが自身の経済状況に不安を抱いていることも示しています。貯蓄したお金を使うことに不安を感じないと答えた人はわずか32%だったのです。35

この退職パラドックスは簡単に説明できます。老後のための貯蓄の仕方を知っている人でも、蓄えたお金をどのように使えばいいのか分からないということです。

米国では、この問題は雇用主が確定給付年金制度から401(k)のような確定拠出年金制度に切り替え始めた40年以上前にさかのぼります。

いろいろな意味で、確定給付年金は401(k)よりずっとシンプルでした。企業で20~30年間働き、退職すると年金から決まった額、つまり確定給付金が毎月支払われるというものです。

私が社会人になった1970年代には、米国人の38%が確定給付年金に加入していましたが、2008年までにその割合はほぼ半減しました。36 一方、確定拠出年金に加入する米国人の割合はほぼ4倍になりました。37

これは良いことだったはずです。ベビーブーム世代を皮切りに、一生同じ場所で働く人々はますます少なくなり、転職をしても積み立てた資産を他の年金制度に持ち運べるようにする必要が出てきたためです。理論的には、401(k)がそれを可能にしましたが、実際はそうではありません。

転職経験のある人なら誰でも、退職貯蓄掛金の移し替えがいかに簡単でないかをご存知でしょう。職場で401(k)に加入していた人々の40%が積み立てた年金を転職時に現金化し、新しい職場でまた新たに積立始めているという調査結果もあります。38

確定拠出年金の本当の欠点は、退職後の責任のほとんどを雇用主ではなく、従業員自身の肩に負わせたことです。確定給付年金では、企業は従業員に対して非常に明確な義務がありました。従業員の退職のための資金は、企業のバランスシート上の負債だったのです。企業は、退職者一人ひとりに毎月小切手を切らなければならなかったのです。しかし、企業型確定拠出年金制度の導入によって退職者は毎月決まった安定した金額を受け取れなくなり(積み立て資産の運用結果に依存するため)、自分で難しい計算をしなければならなくなったのです。

ほとんどの確定拠出年金口座には毎月いくらまで引き出せるという指示がないため、加入者は退職に備えた貯蓄を各自で行い、リタイア後は残りの人生の生活費を賄うために適切なペースで取り崩さなければなりません。しかし、自分が何歳まで生きるかなど誰にもわかりません。

簡単に言えば、確定給付年金から確定拠出年金への移行は、ほとんどの人々にとって、経済的確実性から経済的不確実性への移行なのです。

だからこそ、退職した人々が貯蓄の使い道に神経質になっているというデータを見て、私たちは何かできることはないだろうかと考え始めました。401(k)のような柔軟性を持ちながら、確定給付年金のように予測可能で給料のような収入源を得ることができる投資戦略を開発できないだろうかと。

それは、実現しました。「LifePath Paycheck™」と名付けられた投資戦略を開発し、今年4月から運用を開始します。この書簡を書いている時点で、14の確定拠出年金(DC)プランスポンサーが50万人の従業員に「LifePath Paycheck™」を提供する予定であり、確定拠出年金で最も活用される投資戦略になる日が来ると私は信じています。

これはリタイアメントにおける革命です。まずは米国でこれを起こし、いずれは世界の様々な国がこの革新の恩恵を受けるでしょう。少なくとも、私はそう願っています。というのも、リタイアメントは貯蓄が主な課題であるものの、データから明らかなように、どのように使うかも同じように難しいためです。

恐怖と希望

退職に関するこのセクションを終える前に、将来のための投資における最大の障壁について少し書きたいと思います。私の考えでは、それは単なる余資のなさでも、複雑さでも、企業の退職プランに加入する時間がないことでもありません。

退職後のための投資、あるいは何のための投資であっても、最大の障壁はおそらく恐怖心でしょう。

金融の世界では、特に「恐怖」を経済的な指標ではなく、曖昧で感情的な概念として捉えることがあります。それはその通りです。しかし、恐怖はGDPと同じくらい重要で、投資行動が影響を受ける指標なのです。結局のところ、投資(または投資を控えること)は恐怖の尺度でしかないのです。将来が現在より悪くなることを恐れているなら、誰も30年も40年も株式や債券に投資することはないでしょう。そのような人は、お金を銀行に預けるかタンス預金をするでしょう。

これは多くの国で起こっていることです。最近の調査によれば、中国では消費者信頼感がここ数十年で最低のレベルにまで落ち込んでいます。39 中国人民銀行によると家計の貯蓄額は、過去最高水準の約20兆米ドルで、貯蓄率にして30%に達しています。将来、生活が厳しくなった場合に備えて、国民は稼いだお金の3分の1近くを現金のまま眠らせているのです。それに対して、米国では貯蓄率は1桁台にとどまります。40

米国では、恐怖に抑圧されることはほとんどありません。希望はこの国の最大の経済的資産なのです。人々が米国の市場に資金を投じるのは、家や事業に投資するのと同じ理由です。米国では、今日より明日の方が良くなると多くの人が信じているのです。

この広大で希望に満ちた国が、私が生まれてからずっと慣れ親しんだ米国でした。しかしここ数年、特に孫の数が増えるにつれて、私は自問するようになりました。孫たちにとっても同じような希望に満ちた米国であり続けるのだろうかと。

最近、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に気になる記事が掲載されました。その記事のタイトルは『The Rough Years that Turned Gen Z into America's Most Disillusioned Voters』(Z世代を米国で最も悲観的な有権者にした苦難の時代)で、目を引くと同時に憂慮すべきデータが掲載されていました。

その記事によれば、1990年代半ばから21世紀初頭にかけて、ほとんどの若者(具体的には高校3年生の約60%)は進学して学位を取得し職に就けば、両親よりも豊かな生活を手に入れることができると信じていました。彼らは将来に対して楽観的でした。しかしパンデミック以降、その楽観的な見方は急激に低下しました。

20年前と比べ、現在の米国の若者は、人生に目的を見出しづらい思う傾向が50%も高まっており、10人に4人が「世界の未来に希望を見出すのは難しい」と答えています。41

私はこれまで50年近く金融に携わってきて、多くのデータを見てきました。しかし、これほど気になるデータはありません。

CEOとして、孫を持つ祖父として、希望が失われていることが気がかりです。そして何よりも、一米国人として現状を憂慮しています。

もし将来の世代が、米国と自分たちの未来に希望を感じられなければ、米国は人々が投資したいと思う力を失うだけではなく、米国を米国たらしめているものを失うことになるでしょう。希望がなければ人々は目先の利益にとらわれ、安全な選択が唯一の選択であると判断するような国になってしまう危険性があります。人々がお金をタンスの中にしまい、夢を寝室に閉じ込めておくような国になってしまう危険性があるのです。

どうすれば希望を取り戻せるのでしょうか。

解決しようとしている問題が退職後の資金であれ、その他の事であれ、私たちが最初に問いかけなければならないのは、どうすれば希望を取り戻せるのかということです。しかし、それに対する答えを私は持ち合わせていません。米国と世界の現状を見るにつけ、私も他の人たちと同じように答えがないことに気づかされます。多くの怒りと分裂があり、私はしばしばなぜそうなってしまったのかを理解できずにいます。

分かっているのは、どのような答えを出すにしても、まず若者を参加させることから始めなければならないということです。彼らの希望のなさを示す同じ調査は、社会を支えるあらゆる分野に対する彼らの信頼感の低さも示しています。私も含め、組織のリーダーたちは、彼らの懸念に共感すべきです。

若者は上の世代への信頼を失っています。私たちにはその信頼を取り戻す責任があります。信頼回復の第一歩として、退職後資金の準備などの長期的な投資の課題に取り組むのも悪くないかもしれないと思うのです。

希望を築くための最良の方法は、若者たちにこう伝えることかもしれません。「君たちは未来に希望を抱けなくなっているかもしれない。しかし、私たちは未来は明るいと思っている。そして、君たちが未来に投資するためのサポートをする。」

Quotation start

若者は上の世代への信頼を失っています。私たちにはその信頼を取り戻す責任があります。信頼回復の第一歩として、退職後資金の準備などの長期的な投資の課題に取り組むのも悪くないかもしれないと思うのです。

新しいインフラの青写真:鉄鋼、コンクリート、官民パートナーシップ

私がロンドンに出張し始めたのは1980年代でした。当時、ロンドンにある2つの主要国際空港のうちヒースロー空港とガトウィック空港のどちらかを選ぶとしたら、おそらく皆さんはヒースロー空港を選んだでしょう。ガトウィック空港は市内から遠く、かなり老朽化も進んでいました。

しかし、2009年にガトウィック空港がグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)に買収されると、状況は一変しました。GIPは滑走路を増やし、セキュリティチェックの時間を半分以下に短縮するため特大の荷物トレイを用意するなど、利用者の利便性向上に取り組みました。

GIPのバヨ・オグンレシCEOは、フィナンシャル・タイムズ紙に、「多くのインフラ事業は、お客様サービスに重点を置かない傾向があります」と語りました。GIPはガトウィック空港を変えたかったのです。その過程で、彼らはこの空港を21世紀にインフラが民間資本によってどのように建設され、運営されるかを示す代表的な例にしました。

米国では、インフラといえば政府が税金を使って整備するものと思われがちです。しかし、このようなインフラ整備は、21世紀半ばにおいてはもはや主流ではなくなるでしょう。その理由については以降で説明しますが、これからは橋や送電網や空港を建設するために政府の財源だけを活用するのではなく、ガトウィック空港に民間資本を活用したのと同じようなアプローチが取られるでしょう。42

インフラの未来は官民のパートナーシップなのです。

債務問題

1兆米ドル規模のインフラ分野は、プライベート市場の中でも急成長している分野のひとつであり、この成長を後押ししているマクロ経済のトレンドも否定できません。発展途上国では、人々が豊かになり、エネルギーから輸送まであらゆるものに対する需要が高まっています。一方、先進国でも政府は新しいインフラを建設し、古いインフラを修復する必要があります。

バイデン政権は超長期のインフラ投資法案に署名をしましたが、その米国でさえも2兆米ドル相当のインフラ整備が控えています。43

このインフラ整備の費用はどのように工面するのでしょうか。負債額が大きいので、おそらく政府支出だけでは賄いきれず、公的資金と民間資金を組み合わせる必要があると私は考えています。負債が大きすぎるのです。

イタリアから南アフリカまで多くの国が史上最大の債務負担に苦しんでいます。公的債務は1970年代半ばから3倍に膨れ上がり、2022年には世界のGDPの92%に達しました。44 そして米国では、私の記憶ではかつてないほどに事態は切迫しています。パンデミックが始まって以来、米国はおよそ11兆1,000億米ドルの新規国債を発行していますが、その額は問題の一部に過ぎません。45 なぜなら財務省は金利も支払わなければならないためです。

3年前、10年物国債の金利は1%以下でした。しかし、これを書いている現在、4%を超えています。この3%ポイントの上昇は非常に危険な上昇です。現在の金利が維持されれば、今後10年間で1兆米ドルもの利払いが増えることになります。46

なぜ今この負債が問題なのでしょうか。米国はこれまで、新規国債を発行して国債の償還資金に充ててきました。そうした手法は新規国債の消化が順調に見込める場合は有効でしたが、今後もこれほど大量の国債を現在と同様のプレミアムで投資家が購入してくれるのかは、定かではありません。

現在、米国債の約30%が外国の政府や投資家によって保有されていますが、各国が資本市場を成熟させ、投資がそれぞれの国内市場に向かえば、この比率はおそらく下がるでしょう。47

雪だるま式に膨れ上がる米国の債務に、もっと多くのリーダーが注意を払うべきです。政府の債務がGDPを上回り、緊縮財政と景気停滞を招いた1990年代後半から2000年代前半の日本のように、米国経済が悪化するシナリオもありえます。債務が大きい米国では、インフレに対処するために金融当局が金利を上げる際に政府による金利負担を考慮しなければならないため、舵取りが非常に難しくなるのです。

しかし、債務危機は避けられないのでしょうか。そうとは限りません。

財政の規律はギリギリのところで負債を抑えるのに役立ちますが、米国が負債を大幅に減らすのに必要なレベルの増税や歳出削減は(政治的にも数学的にも)非常に難しいでしょう。しかし、増税や歳出削減の他にもうひとつ方法があります。それは経済成長です。今後5年間、米国のGDPが平均3%(名目ではなく実質で)成長すれば、債務残高に対するGDP比は120%に抑えられます。120%は、依然高いものの対処可能な数字です。

はっきりさせておかなければならないのは、3%の成長は特に労働人口の高齢化を考えれば、非常に高い目標であるということです。債務削減に関して政策当局者は、施策をシフトさせる必要があります。なぜなら、増税や歳出削減によってのみ解決を図ることは非常に困難なためです。米国の債務問題への取り組みは、経済成長の創造を中核とした政策へシフトする必要があるのです。この政策には、資本市場を活用し成長促進のためのインフラ、特にエネルギー・インフラを整備することが含まれます。

エネルギー・プラグマティズム

道路、橋、港湾、空港、携帯電話の基地局など、インフラ・セクターは多岐にわたりますが、ブラックロックが間違いなく新規投資の需要が最も大きいと見ているのは、エネルギー・インフラです。

なぜエネルギーなのか。この分野では今、同時に2つのことが起こっています。

ひとつは「エネルギー・トランジション(エネルギー構成の転換)」です。これは、世界のGDPの90%を占める国々が推進するメガフォース(主要な経済的潮流)です。48 多くの国々で、風力発電や太陽光発電が化石燃料より安価になっていることから、これらの国々は再生可能エネルギーの導入をこれまで以上に急ピッチで進めています。49 また、これは気候変動に対する主な対処法でもあります。そしてこのエネルギー・トランジションは、市場に波及効果をもたらしており、ブラックロックのお客様を含め投資家にリスクと投資機会の両方をもたらしています。

私は2020年の書簡から「エネルギー・トランジション」について書き始めました。それ以来、米国ではこの問題がたびたび論争の的となってしまっています。しかし、その議論の外では、多くのことは変わっておらず、社会は依然として脱炭素化に多額の投資をしています。例えば、欧州のブラックロックのほとんどのお客様にとって、ネットゼロは依然として投資の最優先事項です。50 しかし、最近では他の理由からクリーン・エネルギーに対する需要が増幅しています。その理由はエネルギー安全保障です。

各国政府は1970年代の石油危機以来(大げさに言えばおそらく産業革命初期から)、エネルギー安全保障を重視してきたので、これ自体は新しいことではありません。実際、サステナビリティを取り上げた2020年の書簡でも、各国は依然としてエネルギー需要を満たすために石油やガスを生産する必要があるだろうと書きました。

私は書簡の中で、エネルギーを確保するためには、地球上のほとんどの地域で「何年もの間、炭化水素に依存する必要がある」と述べました。51

Quotation start

「エネルギー・プラグマティズム」53とも言うべき旗印の下で脱炭素化とエネルギー安全保障の双方を同時に主張する指導者が増えているのは、このためでもあります。

そして2022年にプーチン大統領によるウクライナ侵攻により、エネルギー安全保障は新たな火種となりました。戦争によって世界の石油とガスの供給が途絶えたことにより、特に欧州では大規模なエネルギー・インフレが起こり、英国、ノルウェー、そしてEU 27カ国は、国民の電気やガス代等の補助に総額8,000億ユーロを費やさなければなりませんでした。52

「エネルギー・プラグマティズム53とも言うべき旗印の下で脱炭素化とエネルギー安全保障の双方を同時に主張する指導者が増えているのは、このためでもあります。

前述の通り、昨年私は17カ国を訪問し、首相からエネルギー・グリッド・オペレーターに至るまで、家庭や企業の電力供給に携わる人たちと多くの時間を過ごしました。彼らの考えは、世界にはまだ両方のエネルギーが必要で、極左や極右の活動家たちが頻繁に主張する、「各国は再生可能エネルギーか石油・ガスのどちらかを選択しなければならない」というものとはまったく正反対でした。彼らはエネルギーに関して独断的どころかはるかに現実的で、最も気候変動に敏感な人たちでさえも、脱炭素化への長い道のりにおいては排出量の低減は図りつつも、当面は炭化水素に頼ることになると考えていました。

ドイツの取り組みは、エネルギー・プラグマティズムが脱炭素化への道であることを示す良い例です。ドイツは、気候変動対策に世界で最も熱心な国のひとつであり、風力発電や太陽光発電に莫大な投資を行ってきました。しかし、ベルリンでは風が吹かない日も、ミュンヘンでは太陽が照らない日もあります。そのような無風・無日照に備えて、ドイツは出力調整可能電力の確保のために天然ガスに頼らざるを得ません。以前はロシアからガスを調達していましたが、今は別の調達手段を考えなければならず、世界中の生産者からガスを輸入するための施設を増設しています。54

他の事例に米国テキサス州があります。同州は、ドイツと同様エネルギー問題に直面していますが、原因はロシアではなく、経済の急拡大にあります。テキサス州の経済は、全米のなかでも群を抜いて急速に成長しており55、電力需要が高まる中、エネルギー網であるERCOT(Electric Reliability Council of Texas)は逼迫した状態にあります。56

現在、テキサスでは、電力の28%が再生可能エネルギーによって調達されており57、これは米国全体と比べると6%多いのですが、10ギガワットの追加の出力調整可能電力がなくなるとテキサス州は壊滅的な停電に見舞われる可能性があります。58 そしてその追加電力の供給の一部はおそらくは天然ガスに頼らざるを得ないのです。この問題に対し、ブラックロックは2月、解決策を探るべく投資家と政策立案者による会議をヒューストンで開催しました。

テキサス州とドイツは、エネルギー・トランジションがどのようなものかを示す好例です。2020年に書簡で書いたように、トランジションは現実に即していなければ成功しません。冬の暖房や夏の冷房を諦めなければいけない、あるいは脱炭素にかかる費用が法外に高いとなれば、誰も脱炭素化を支持しないでしょう。

2020年以降、経済学者たちは現実に即したトランジションとは実際に何を意味するのか、ということを説明するために、様々な言葉を普及させてきました。その重要な概念のひとつが「グリーン・プレミアム」です。「グリーン・プレミアム」とは、人々が環境に優しい生活を送るために支払う割増料金のことで、例えばガソリン自動車(内燃機関車)から電気自動車への乗り換えなどがこれに該当します。「グリーン・プレミアム」が低ければ低いほど、脱炭素化がより促進されます。

ここからが資本市場が大いに力を発揮するところです。それは、民間投資はエネルギー企業の技術革新にかかるコストを低減し、それを世界中に拡大するのに役立つからです。昨年、ブラックロックはお客様に代わって、トランジション関連プロジェクトに十数件投資しました。東南アジアでは、タイとフィリピンで1ギガワット(1都市分の供給を賄える電力量)以上の太陽光発電の建設を目指すディベロッパーと業務提携しました。59 また、アフリカ最大の風力発電所であるトゥルカナ湖風力発電にも投資しました。この風力発電所はケニアにあり、現在同国の発電量の約12%を占めています。60

Antora Energyが開発中の巨大な熱電池などの初期段階の技術もあります。同社は、再生可能エネルギーが安価で豊富な時間帯に風力や太陽光発電で炭素のブロックを加熱します。この熱電池は摂氏2,400度にも達し、太陽よりも明るく輝きます。61 そしてその熱は、太陽が照っていなくても風が吹いていなくても巨大な産業施設に24時間電力を供給することができるのです。

ブラックロックは、シンガポール政府系投資会社のTemasekとのパートナーシップによって設立されたDecarbonization Partnersを通じてAntora Energyに投資をしました。私たちが投資した資金は、Antora Energyの事業規模の拡大を支援し、また産業界のお客様に対し数十億米ドル相当のゼロ・エミッション・エネルギーを提供するものです。62(いつかテキサス州やドイツが直面する課題を、同社の熱電池によって二酸化炭素を排出することなく解決できる日が来るかもしれません。)

最後に、二酸化炭素回収という技術について触れます。昨年、ブラックロックのインフラ・ファンドのひとつが、STRATOSと呼ばれるプロジェクトに5億5,000万米ドルを投資しました。このプロジェクトは、2025 年の竣工時には世界最大の大気中二酸化炭素回収(Direct Air Capture)施設となる予定です。63 このプロジェクトの興味深い点は、この施設を建設しているのがテキサス州の大手石油会社のオクシデンタル・ペトロリアムであるということです。

エネルギー市場は、一部の人が考えているように石油・ガス会社と、新しいクリーン・エネルギーや気候変動対策に関する技術開発企業の間で、はっきり分かれているわけではありません。オクシデンタル・ペトロリアムをはじめとする多くの企業は、その両方を手掛けており、彼らは脱炭素化のパイオニアでもあります。これは、ブラックロックが従来のエネルギー企業からの投資の引き揚げを支持しない主な理由です。

現在、ブラックロックはお客様に代わって、伝統的なエネルギー企業に3,000億米ドル以上を投資しています。この3,000億米ドルのうち、半分以上の1,700億米ドルは米国内を拠点とする企業に投資しています。64 私たちがこうしたエネルギー企業に投資している理由は明快です。それは、お客様のご資金だからです。お客様が炭化水素に投資されたいのであれば、ブラックロックはあらゆる機会をご提供します。私たちがお客様に代わって約1,380億米ドルをエネルギー・トランジション戦略に投資しているのと同じです。それが資産運用会社としての役割であり、私たちはお客様のご要望に従います。

しかし、エネルギーに関しては人々の考えが分かれるのも理解しています。脱炭素化とエネルギー安全保障は、膨大なエネルギー・インフラ投資需要を牽引するマクロ経済トレンドとなっているためです。この2つのトレンドは、場合によって共存しないこともありますが、一方で大いに補完しあうこともあります。例えば、先進的なバッテリー蓄電技術は送電網の脱炭素化に貢献すると同時に、海外への電力依存度を減らす効果ももたらします。

重要なのは、エネルギー・トランジションは一直線に進んでいるわけではない、ということです。これまで何度も述べたように、エネルギー・トランジションは、世界各地で様々な方法で、様々なペースで進んでいます。ブラックロックの役割は、お客様がどこにいようと、エネルギー市場の大きな変化を乗り越えていくための舵取りをお手伝いをすることです。

ブラックロックの次なる変革

活況を呈しているインフラ市場において、ブラックロック自体が革新を遂げていくことが、お客様を支援する方法のひとつであると考えています。このセクションの冒頭で、ガトウィック空港のオーナーであるGIPについて触れましたが、ブラックロックは今年1月に同社を買収する計画を発表しました。

なぜGIPを選んだのか。ブラックロックのインフラ事業は、過去数年間で急成長していました。しかし、急速に高まる需要に応えるためには、インフラ事業をさらに急成長させる必要があると考えました。

インフラ整備のための資金調達方法を模索する必要があるのは、債務超過に陥っている政府だけではなく民間企業も同様です。世界には、民間企業によって所有・運営されている巨大なインフラが存在します。携帯電話の基地局はその良い例です。化学製品会社の原料を供給するパイプラインもそうです。これらの資産の所有者は、インフラにかかる費用を全額自社のバランスシートに計上するよりも、ファイナンス・パートナーを持つことを好む傾向が見受けられます。

私はこの傾向について考えを巡らせ、昔の同僚でありGIPの創業パートナーであるバヨ・オグンレシに電話をしました。

バヨと私は、投資銀行であるファースト・ボストンで金融のキャリアをスタートしましたが、その後私たちの進む道は分かれました。私はファースト・ボストンでいくつかの取引に失敗し、1億米ドルの損失を出してしまいました。この話は改めて触れる必要はないでしょう。しかし、この出来事が私とブラックロックのパートナーたちを債券市場のリスク管理の開拓へと導きました。一方、バヨと彼のチームは、プライベート市場における近代的なインフラ投資を開拓していました。

そして今、私たちは再び力を合わせるために計画を進めています。これにより、投資家の皆様に人々の生活に必要不可欠なインフラ(電気を届け、飛行機を飛ばし、電車を走らせ、携帯電話がいつもつながるなど)に投資する、より良い機会をご提供できると考えています。

2023年におけるブラックロックの活動について

この書簡では、資本市場が世界経済において、さらに大きな役割を果たすようになるという、私の見解をお伝えしました。世界がインフラ、債務、リタイアメント資金の問題といった各課題に取り組むならば、資本市場が果たす役割は不可欠だからです。これらは21世紀半ばの主要な経済問題であり、その解決には資本主義の力が必要なのです。

ブラックロックはお客様との協働を通じて、これらの課題の解決に積極的に取り組んでまいります。そして、世の中のトレンドにいち早く対応できるよう、お客様とのつながりをこれまで以上に大切にしていきます。

過去5年間で、多くのお客様から1兆9,000億米ドルを超える新たな資産の運用委託をいただきました。そのお客様の中には大変多くの最終受益者の個人の方々がいらっしゃいます。また、ブラックロックのリスク管理サービスは多くのお客様に利用され、より正確なポートフォリオリスクの把握や事業成長およびビジネスの敏捷性(アジリティ)の向上を支援しています。私たちの預かり資産残高は、長年にわたるお客様からの運用委託と資本市場の長期的な拡大に支えられ、2023年は1.4兆米ドル以上増加し10兆米ドルに達しています。

マーケット環境が良い時も悪い時も、お客様がより多くのリスクを取ろうとしている時もそうでない時も、ブラックロックの一貫した業界トップクラスの成長は、お客様がより多くの資産をブラックロックに一元委託してくださっていることを示しています。2023年は市場が急変し、リスク資産からの大幅な引き揚げが進んだにもかかわらず、お客様から2,890億米ドルに及ぶ新規マンデートを頂きました。

ブラックロックは差別化されたビジネスモデルにより、お客様とともに成長し続け、通年のベースフィーの成長はプラスを維持することができました。市場環境に左右されることなく、また業界の大半が資金流出に見舞われる中でも、堅調に成長を続けています。

先行きの不透明感が投資行動に影響を及ぼした2016年と2018年を思い返してみると、多くのお客様がリスク回避のため、資金を現金に移しました。しかし、ブラックロックはお客様との対話を続けながら、投資パフォーマンスの向上、新商品やテクノロジーの革新に努め、ポートフォリオ構築に関するアドバイスをご提供しました。その後、お客様は再び積極的に市場に参入する準備が整うと、またブラックロックをパートナーに選び、私たちの新規資金フローは新記録を達成し、それに伴う収益も目標を上回りました。

2023年末にかけて資金流入の伸びは加速しました。第4四半期(9月~12月)には960億米ドルの純資金流入があり、この勢いのまま2024年を迎えました。

私は、2024年も2023年と同じように、多くの時間をお客様の訪問に費やすつもりです。既に米国内および世界のお客様を訪れていますが、これまで以上に企業やお客様からブラックロックをパートナーにしたいという前向きなフィードバックをいただいています。

ブラックロックがお客様に代わって投資をしている発行体企業からは、私たちが基本的に長期に安定した資本を提供していることに対して高い評価を得ています。私たちは多くの場合、早い段階で投資を行い、債券であれ株式であれ、IPOの前であれ後であれ、異なる景気サイクルを通じて投資を継続します。これらの企業は、ブラックロックのグローバルなネットワークやブランド、市場や業界の横断的な専門知識を高く評価しています。このようなブラックロックの強みが私たちのソーシング力を支えており、ひいてはお客様にご提供するパフォーマンスの源泉となっているのです。

過去1年半の間に、ブラックロックはお客様に代わって多くの案件に投資をしました。STRATOSの大気中二酸化炭素回収プロジェクトに加え、AT&Tとはギガパワー・ジョイント・ベンチャーで提携し全米でブロードバンドを構築しました。また、ブラジルのBrasol、韓国のAirFirst、オーストラリアのAkaysha Energy、ケニアのLake Turkana Wind Farmなどグローバルな投資も行いました。

ブラックロックのプライベート戦略へのニーズが高い主な理由は、ブラックロックのソーシング能力にあります。これらの戦略は、インフラとプライベート・クレジットが牽引し、2023年には140億米ドルの新規資金が流入しました。今後数年間、これらのカテゴリーがオルタナティ ブ投資の主要な成長ドライバーになると引き続き期待しています。

ブラックロックはアクティブ戦略でも、高い知見、専門知識、そして優れた投資パフォーマンスで、他社との差別化を推し進めています。2023年は、業界全体は資金流出超であったにもかかわらず、ブラックロックのアクティブ戦略には約600億米ドルの純資金流入がありました。

ETFにおいても2023年に業界トップクラスの1,860億米ドルの純資金流入を達成しました。ETF業界におけるiシェアーズのリーダーシップは、ブラックロックのグローバル・プラットフォームとお客様とのつながりの強さの証でもあります。

私たちがいくつもの市場で目の当たりにしてきたのは、投資がより簡単でより手頃な価格でできるようになれば、投資家の数はおのずと増えるということです。各国市場のデジタル・プラットフォームを通して、より多くの投資商品を提供し、iシェアーズETFのオーガニック成長を加速させています。

ブラックロックは、欧州・中東・アフリカ(EMEA)において、Trade Republic、Scalable Capital、ING、Lloyds、Nordnetをはじめとする多くの銀行や証券プラットフォームと提携し、個人投資家様にETF積立プランを提供しています。これらのパートナーシップにより、多くの人々に投資商品を提供できるようになり、長期的な投資を通じて経済的な豊かさを実現することができると考えています。

2023年には、Upvestへのマイノリティ出資も発表しました。Upvestは、欧州の人々が市場にアクセスする方法を進化させることで、より安価で簡単に投資を始められるように支援しています。

さらに、英国の大手デジタルバンクであるMonzoとの提携を通して、同社のプラットフォーム上でブラックロックの商品を提供しています。Monzoでは、1ポンドから投資をすることができます。このようなパートナーシップを通じて、i シェアーズ ETFの販路を進化させ、グローバル市場へ のアクセスを提供しています。

また、Aladdinについても少し触れたいと思います。Aladdinは、お客様にブラックロックの戦略を横断的に提供するために不可欠な、全社的な共通基盤(エンジン)です。ブラックロック全体を統合するオペレーティング・システムであるだけでなく、特に資産規模の大きいお客様に利用されているプラットフォームです。統合されたデータとリスク分析、そしてパブリックとプライベート市場を横断するポートフォリオ全体の把握に対するニーズが、年間契約額の成長を後押ししています。

2023年には、Aladdinを通じたテクノロジー・サービスで15億米ドルの売上を創出しました。お客様はAladdinを活用することで、成長・拡大を続けており、Aladdinの売上の50%以上は複数のAladdin製品を複合的に利用しているお客様によるものです。このように売り上げにも好調な営業活動が反映されています。

今後を展望すると、お客様がポートフォリオのリスク資産を増やす過程で、ブラックロックのパブリックとプライベート市場の双方のビジネスにおいて大きな好機が訪れると思います。そして、統合されたテクノロジーは、規模を拡大しながらお客様の機動的なポートフォリオ運用を支える上で必要となるでしょう。

今こそ投資家は、ポートフォリオの構築方法を大幅に変革すべきです。ブラックロックは、投資家が「未来のポートフォリオ」を構築できるよう、パブリックとプライベート市場を統合し、デジタルを活用したポートフォリオの構築を支援します。これらの多様な投資戦略とテクノロジーのプラットフォームは、ブラックロックの今後数年間の構造的成長を推し進めるものだと考えています。

将来を見据えた変革

ブラックロックは、お客様の潜在的なニーズを理解するためにビジネスを継続的に革新・進化させるとともに、組織とリーダーシップチームも進化させています。

お客様のニーズや洞察をより的確に予測し、お客様のご期待に即したソリューションを提供し続けるために、ブラックロックは年初に組織改革を行いました。

ブラックロックは長年にわたり、ETF、アクティブ型ミューチュアルファンド、セパレート・マネージド・アカウント(SMA)の商品構成を区別しながらも、ポートフォリオ全体にわたってソリューションを提供してきました。

しかし昨今、従来型の商品の垣根は曖昧になりつつあります。お客様は、ETF、ミューチュアルファンド、SMAという商品の垣根を取り払い、流動資産と非流動資産、パブリックとプライベート市場、アクティブとインデックス戦略の双方をシームレスに組み合わせたポートフォリオを構築しています。

ブラックロックは、ETFをより多くの投資家様が利用できるようにし、新たな資産クラス(債券ETF等)や投資戦略(アクティブETF等)を提供し、ETF市場の拡大において重要な役割を担ってきました。その結果、ETFはもはや単なるインデックス戦略の概念ではなく、様々な投資ソリューションのための効率的な仕組みになりつつあります。

私たちは、常にETFをテクノロジー(=投資を容易にするテクノロジー)と捉えてきました。そして、当社のAladdinのテクノロジーが資産運用の中核となったように、ETFも資産運用の中核を成すようになると考えます。iシェアーズETFとインデックス・ファンドを会社全体に組み込むことが、iシェアーズとブラックロックのあらゆる投資戦略の成長を加速させると考えるのはそのためです。

私たちは、より良い経験、パフォーマンス、結果を提供することを目指し、新しい設計図を通じて、より俊敏にかつ密接にお客様と連携してまいります。

VOTING CHOICE:お客様の選択肢の拡大

健全な資本市場では、企業と投資家の間で継続的なフィードバックを実現する対話が必要不可欠です。ブラックロックは10年以上にわたり、お客様のためにこの継続的な対話の発展に努めてきました。

ブラックロックは、業界をリードするスチュワードシップ・プログラムを構築し、お客様の長期的な経済活動に影響を与える課題について投資先企業との積極的な対話に取り組んでまいりました。実効性ある対話の実現には、企業が今後さらに直面するリスクや好機にどのように対応しているのかを理解する必要があります。例えば、地政学的な分断がサプライチェーンにどのような影響を与えるのか、借入コストの上昇が持続的な利益成長の実現にどのような影響を与えるのか、などです。

ブラックロックは、投資先企業と建設的な対話を行うために、最大規模のスチュワードシップ・チームを結成しました。これは、数社の議決権行使助言会社への過度な依存を疑問視していたためです。私たちのお客様は、企業との建設的な対話に基づいた、議決権行使助言会社とは独立した、議決権行使判断を期待しています。この重要な責任を弊社に託してくださったお客様のために、私たちは投資先企業の健全なコーポレート・ガバナンスの実践と財務の健全性を促進するという、揺るぎない信念を持ち続け取り組んでまいります。

また、議決権行使により積極的に関与することを望む機関投資家お客様のニーズにお応えするため、ブラックロックではより多くの選択肢を提供するためのイノベーションを推進しています。2022年、ブラックロックは機関投資家のお客様が議決権行使の意思決定に参加できる機能「Voting Choice」を業界で初めて導入しました。現在では、お客様のインデックス運用で投資する株式資産の約半数においてVoting Choiceをご利用いただくことが可能です。また、今年の2月には、弊社最大のコアETFであるS&P500において、個人投資家のお客様にも同機能の提供を試験的に開始しました。

私たちは、コーポレート・ガバナンスに投資家様からの意見が反映されることは株主の民主化のさらなる強化に繋がると信じています。アセットオーナーが十分な情報を取得することで、重要な議決権行使の意思決定にさらに参加できるようになれば、エコシステムの継続的な変革が起こると信じています。一方で、議決権行使助言会社の数が増えることも業界にとって有益であると確信しています。

長期的な成長に向けた戦略

過去36年間、ブラックロックはお客様の声に耳を傾け、お客様の長期目標に貢献することで資産運用業界をリードしてきました。弊社の成長は、お客様のニーズを理解し、市場の機会を捉える投資戦略を構築し、規律をもって実行するという深く揺るぎないコミットメントの上に築かれてきました。それは、例えばiシェアーズETFによる新たな市場へのアクセス、ポートフォリオ・レベルのアドバイス、Aladdinを投資家様のデスクトップにお届けするといったことです。お客様は弊社の思考と成長戦略の基盤であり、それは私たちが事業全体で行ってきた投資に反映されています。

テクノロジーとアドバイザリー、ETF、アクティブ戦略、プライベート資産を組み合わせることで、より優れたソリューションの提供が可能となります。これによりお客様にアウトソーシング・ソリューションや、多くのポートフォリオ・ソリューションをご提案することができるようになり、将来にわたり継続的にブラックロックの差別化されたオーガニック成長を牽引する原動力になると考えています。

例年通り、弊社の経営陣と取締役会は、成長戦略の見直しに時間を費やしました。そこでは今後、経済環境がブラックロックとお客様にどのような機会をもたらすのか、お客様のニーズを予測し、それを満たすためにどのような行動を取るべきかについて議論しました。さらにどのように組織構造、事業構造、投資能力、サービスモデルを進化させれば、ブラックロックが業界を牽引し続けることができるのかなどについても議論を重ねました。

成長戦略の見直しを経て、弊社の経営陣と取締役会は、ブラックロックの事業戦略およびスケールメリットとコストの効率化を活かしたビジネスモデルへの強い確信を新たにしました。弊社の事業戦略は、Aladdin、ETF、プライベート投資戦略の拡大、アクティブ戦略におけるアルファの追求、サステナブル投資における多様な選択肢の提供、そしてポートフォリオ・レベルのアドバイスをお客様にご提供することを中核に据えています。

弊社では、オーガニック成長と効率化の実現のため、内部投資を継続的に行っています。例えば、今後のお客様の投資機会を見据え、プライベート市場、ETF、テクノロジー、ポートフォリオ・ソリューションなどに投資を行ってきました。

プライベート市場では、構造的な成長トレンドに資本を投下する体制を整えてきました。プライベート資産は、迫るインフラ需要への対応や、銀行や公的金融機関のミドルマーケット離れに伴うプライベート・クレジットの役割の拡大などを受けて、必要不可欠な存在となりました。ブラックロックは、その規模、独自性、実績で、プライベート市場でシェアを獲得する体制を整えています。また、GIPの買収により、さらに補完されたソリューションをお客様にご提供できるようになると確信しています。

ETFの分野では、グローバルな展開とイノベーションを通じて投資へのアクセスを拡大することで、引き続きETF市場を牽引していきます。ETFは順応性の高い金融テクノロジーであり、単に投資を容易にするだけではなく、より不透明な市場で流動性、価格発見をもたらしました。最近の例では、ETFを通じてビットコインへのエクスポージャーを提供しています。

ETFは、iシェアーズを筆頭に米国で驚異的な成長を遂げてきました。米国で数年前に見られた手数料ベースのアドバイザリーやモデル・ポートフォリオの増加といったトレンドは、世界中で根付き始めています。これらを背景にETF市場は今後さらに普及が加速すると考えています。2023年のiシェアーズETFの純資金流入額の約半分は、欧州のiシェアーズETFの700億米ドルを筆頭とする、米国外の取引所に上場されているETFによるものです。

積極的な資産配分、銘柄選定、リスク管理は、長期的なリターンを得るための重要な要素であり続けてきました。ブラックロックのマルチアセット、債券、株式のアクティブ・チームは、この金利と市場のボラティリティが高まる新たなレジームから生じる投資機会を捉える体制を整えています。特に、利回りが復活した債券市場での投資機会と、人工知能(AI)がブラックロックのシステマティック・インベストメント・ビジネスのパフォーマンスを押し上げることを期待しています。

債券は、過去15年間の低金利環境と比べ、より高い利回りと優れたリターンが期待できることから、ポートフォリオ全体における役割がますます重要になっていくと考えます。10年物米国債の金利が長期平均に近づいている今、お客様はポートフォリオの債券配分を再考しています。

ブラックロックは、1兆7,000億米ドル近くを運用するインデックス戦略や、1兆米ドル以上を運用するアクティブ戦略だけではなく、分散された債券プラットフォームでも有利な立場にあります。最近、最も興味深かった活用例の一つは、運用会社やファイナンシャル・アドバイザーがETFをアクティブ戦略に組み入れたり、独自に運用するインカム・ソリューションにアクティブETFのようなイノベーションを活用したりしていることです。

また、アセットクラスを問わず、統合されたデータ、テクノロジー、リスク管理に対するニーズの高まりは、今後もAladdinの成長を牽引していくと考えています。13万人を超えるユーザーからなるダイナミックなエコシステムを通じて、Aladdinのプラットフォームは常に革新と拡充を続けています。AladdinのAIコパイロット(Copilot)への投資、エコシステム・パートナーシップをサポートするオープン性の強化、ポートフォリオ全体のソリューションの進化は、Aladdinの価値をさらに高めるでしょう。

2023年は、2,890億米ドルの新規資産をお客様からお預かりできたことを光栄に思います。また、ここ数ヶ月の間に、市場やお客様の間で、明らかに前向きなセンチメントやトーンが見受けられるようになり、それは2024年を通して引き継がれると、私は非常に楽観視しています。

ブラックロックは、変化する環境に適応し、進化し、成長し続けてきました。その結果、1999年の株式公開以来、株主様に9,000%のリターンを還元してきました。これはS&P500のリターンの490%をはるかに凌駕するもので、すべてのステークホルダーに還元する私たちのビジネスモデルを象徴しています。

ブラックロックのIPO以来のトータル・リターン(2023年12月末現在)

ブラックロックのIPO以来のトータル・リターン(2023年12月末現在)

出所:S&P グローバル。パフォーマンス・グラフは、必ずしも将来の投資パフォーマンスを保証するものではありません。

取締役会

ブラックロックの取締役会は、長期的な戦略の見直しや事業のリスクと機会の評価など、弊社の長期的な成功を達成するうえで欠かせない役割を担っています。彼らの多様な専門知識と経験は、弊社を正しい方向へ導き、コーポレート・ガバナンスを強化することにつながっています。そして、弊社のリーダーシップチームとの建設的な対話は、戦術的かつ変革的に、ブラックロックの事業を発展させる原動力となっています。これには、組織の戦略的再構築とGIPの買収という1月に実施した2つの変革も含まれます。これらは、約15年前にバークレイズ・グローバル・インベスターズを買収して以来、最大規模の変革となります。

GIPの取引完了後は、バヨ・オグンレシが弊社の取締役に就任する予定です。お客様の潜在的なニーズを理解し、グローバルに展開するビジネスを継続的に革新・進化させるとともに、時間をかけて取締役会を進化させることに尽力してまいります。

最後に

ブラックロックは、マンハッタンの小さな事務所でわずか8人のメンバーで設立し、36年かけて世界最大の資産運用会社へと成長しました。しかし、これはより大きなサクセス・ストーリーのほんのひとつにしか過ぎません。

私の両親が50年間勤め上げた後、豊かなリタイア生活を送ることができたことも、サクセス・ストーリーです。米国が1980年代のS&L(貯蓄貸付組合)危機や2008年の金融危機を乗り越え、素早くそして力強く立ち直ったことも、サクセス・ストーリーです。

そして、これからは世界中のより多くの人々がこのサクセス・ストーリーに加わることを願っています。財政危機を経済成長によって克服する国家のストーリー。より多くの住宅に電力を供給し、より多くの道路を建設する都市のストーリー。リタイアメント後に、尊厳をもって黄金期を過ごす人々のストーリー。

こうしたストーリーは、資本市場の力と資本市場に投資しようとする希望に満ちた人々の力によって、はじめて可能になると私は信じています。

敬具

Larry Fink

ローレンス・D・フィンク
会長 兼 CEO

 


アーカイブ

2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016

 

1 1960年1月から1990年12月までに1,000米ドル(配当は再投資)したとの仮定に基づく。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。

2 Federal Reserve History, Savings and Loan Crisis

3 OCED Economic Surveys: United States (2016)

4 Securities Industry and Financial Markets Association, Capital Markets Fact Book (2023), p.6

5 World Federation of Exchanges, Market Statistics-February 2024, (2024)

6 World Economic Forum, Ageing and Longevity, (2023)

7 United Nations, World Population Ageing, (2017), p.8

8 The Wall Street Journal, Japan’s Nikkei Tops 40000 for First Time, Driven by AI Optimism, (2024)

9 Cabinet Secretariat of Japan, Doubling Asset-based Income Plan, (2022), p.2

10 1. 出所:Adele M. Hayutin, New Landscapes of Population Change:A Demographic World Tour (Hoover Press, 2022)を参考にブラックロックが作成。データは国連人口部『世界人口見通し』(World Population Prospects、2022年最新版)、中位出生率予測を参照。2. ピーク年とは、その国の生産年齢人口が最大となる年。出所:国連人口統計(2022年現在)。OECD(2023年6月現在)。世界銀行(2022年現在)。

11 United Nations, UN DESA releases new report on ageing, (2019)

12The New York Times Magazine, Can We Live to 200? (2021)

13 National Library of Medicine, Estimated Life-Years Gained Free of New or Recurrent Major Cardiovascular Events With the Addition of Semaglutide to Standard of Care in People With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular Risk, (2022)

14 出所1: Bureau of Labor Statistics, Employee Benefits in the United States, (2023), p.1; 出所2: Bureau of Labor Statistics, Employee Benefits in Industry, (1980), p. 6

15 2021年12月31日現在の残高および2020年現在のCerulliのデータに基づきブラックロックが算出した推計値。ETF資産には、Cerulliのデータに基づく適格資産のみを含み、機関投資家が保有するETFの9.5%が年金または退職に関連すると仮定しています。機関投資家の推計には「退職関連」と定義された資産が含まれ、特定の退職マンデートを持つ商品および顧客(ライフパス、年金など)に基づいています。ラテンアメリカの推計値は、ラテンアメリカの年金基金の顧客向けに運用されている資産に基づきます(現金を除く)。

16 ブラックロック、2021 年 12 月 31 日現在。米国人の総数は、ブラックロックの確定拠出年金および確定給付年金の顧客における加入者の推計に基づいて算出。確定拠出年金は、401(k)および403(b)の稼働している加入者について、FERSおよびISS Market Intelligence BrightScopeのデータに基づいて推計。確定拠出年金には、加入者が1つ以上のブラックロック・ファンドにアクセスでき、資産1億米ドル以上のDCプランが含まれます。ただし、ブラックロック・ファンドに投資をしていない加入者が含まれている可能性があります。確定給付年金は、ブラックロックの確定拠出年金顧客でなく、米国で最も規模の大きい確定給付年金のうち20基金の加入者総数について、公的書類およびPension & Investmentsのデータに基づいて推計しています。

17 U.S. Bureau of Labor Statistics, Labor Force Statistics from the Current Population Survey, (Feb. 2023)

18 ブラックロックが資産を運用する確定給付年金に加入している現役の公立学校教員の総数。バージニア州、アラスカ州、ペンシルバニア州の年金加入者は、同州のDBプランが加入者のデフォルトプランではないため除外。公立学校の教員数は全米教育統計センターの2022年度の予測値。年金加入率は、2022年3月現在の米国労働統計局のデータ(89%)に基づく。

19 Social Security, Life Tables for the United States Social Security Area 1900-2100, Figure 3a

20 Social Security, When to Start Receiving Retirement Benefits, (2023), p.2

21 Social Security, Summary: Actuarial Status of the Social Security Trust Funds, (2023)

22 Dutch GovernmentWhy is the state pension age increasing? (translated from Dutch)

23 U.S. Bureau of Labor StatisticsCivilian labor force participation rate, (2000-2024)

24 U.S. Census BureauSurvey of Income and Program Participation (SIPP), (2022)

25 Federal ReserveEconomic Well-Being of U.S. Households in 2022, (2023), p.2

26 BlackRockEmergency Saving Initiative: Impact and Learnings Report, (2019-2022), p.2

27 BlackRock, Emergency Savings Initiative: Impact and Learnings Report, (2019-2022), p.12

28 BlackRockWhat are target date funds?

29 AARP, New AARP Research: Nearly Half of Americans Do Not Have Access to Retirement Plans at Work, (2022)

30 CIA: The World FactbookCountry Comparisons: Population (2023 est.)

31 OECDPensions at a Glance 2023, (2023), 222

32 Georgetown University Center for Retirement InitiativesState-Facilitated Retirement Savings Programs: A Snapshot of Program Design Features, (2023)

33 Parliament of AustraliaSuperannuation and retirement incomes

34 Human InterestThe power of 401(k) automatic enrollment, (2024)

35 BlackRockTo spend or not to spend? (2023), p. 2-5

36 出所1: The Wall Street Journal, The Champions of the 401(k) Lament the Revolution They Started, (2017); 出所2: Social Security Office of Retirement and Disability Policy, The Disappearing Defined Benefit Pension and Its Potential Impact on the Retirement Incomes of Baby Boomers, (2009)

37 U.S. Chamber of CommerceStatement of the U.S. Chamber of Commerce, (2012), p. 3

38 Harvard Business ReviewToo Many Employees Cash Out Their 401(k)s When Leaving a Job, (2023)

39 The Wall Street JournalWhy China’s Middle Class Is Losing Its Confidence, (2024)

40 The Wall Street JournalCovid-Era Savings are Crucial to China’s Economic Recovery, (2023)

41 The Wall Street JournalThe Rough Years That Turned Gen Z Into America’s Most Disillusioned Voters, (2024)

42 Financial TimesHow Adebayo Ogunlesi’s contrarian bet led to $12.5bn BlackRock tie-up, (2024)

43 American Society of Civil Engineers (ASCE), 2021 Report Card For America’s Infrastructure, (2021), p. 5

44 International Monetary FundGlobal Debt Is Returning to its Rising Trend, (2023)

45 Fiscal Data: U.S. TreasuryDebt to the Penny, (Debt was $23.4T in March 2020 and $34.5T in March 2024)

46 The Wall Street JournalA $1 Trillion Conundrum: The U.S. Government’s Mounting Debt Bill, (2024)

47 US Department of TreasuryTable 5: Major Foreign Holders of Treasury Securities

48 As of March 2024. Net Zero Tracker, https://zerotracker.net (last visited March 18th, 2024)

49 Associated Press NewsThe year in clean energy: Wind, solar and batteries grow despite economic challenges, (2023)

50 BlackRock Global perspectives on inveting in the low-carbon transitionサンプル数 n=200、2023 年 5 月~6 月に実施。トランジション投資に関する機関投資家の考え、アプローチ、障壁、機会を調査。調査対象となったEMEAの回答者の83%は、ポートフォリオ全体のトランジション目標として2050年までのネットゼロまたはその他の日付を掲げました。

51 BlackRock’s 2020 Letter to Clients, Sustainability as BlackRock’s New Standard for Investing, (2020)

52 ReutersEurope’s spend on energy crisis nears 800 billion euros, (2023)

53 訳注:プラグマティズムは、ギリシア語で「行動」や「実践」を意味する「プラグマ」に由来して生まれた言葉で、物事の真理を理論や信念からではなく、行動の結果や効果をより重視する思想。

54 The New York TimesGermany Announces New L.N.G. Facility, Calling It a Green Move from Russian Energy, (2022)

55 Texas Fall 2023 Economic Forecast

56 Federal Reserve Bank of Dallas, Texas electrical grid remains vulnerable to extreme weather events, (2023)

57 U.S. Energy Information Administration: Electricity Data Browser

58 U.S. Energy Information AdministrationSolar and wind to lead growth of U.S. power generation for the next two years, (2024)

59 BlackRock Alternatives, CFP, 2023

60 Kenya PowerAnnual Report & Financial Statements, (2022)

61 ReutersBlackRock, Temasek-led group invest $150 mln in thermal battery maker Antora, (2024)

62 Business WireAntora Energy Raises $150 Million to Slash Industrial Emissions and Spur U.S. Manufacturing, (2024)

63 Oxy, Occidental and BlackRock Form Joint Venture to Develop STRATOS, the World’s Largest Direct Air Capture Plant, (2023)

64 2022年6月30日現在。「エネルギー企業」とは、GICS-1 エネルギーセクターに分類される企業を指します。

 

重要事項

 

当資料は、ブラックロック・グループ(以下、「ブラックロック」という。)が作成した英語版資料の翻訳をブラックロック・ジャパン株式会社(以降「弊社」)が参考情報として提供するものです。当資料の内容は情報提供を目的として作成されたものであり、特定の金融商品取引の勧誘や、投資資産やセクター・アロケーション等の推奨を目的とするものではありません。また、ブラックロック全体、ないし弊社が設定・運用するファンドにおける投資判断と本レポートの見解とは必ずしも一致するものではありません。なお、当資料はグローバルの投資家向けに作成されたもので、日本の投資家には必ずしもあてはまらない内容も含まれております。当資料は、ブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。また、当資料の各種情報は過去のもの、または、見通しであり、今後の運用成果等を保証するものではなく、当資料を利用したことによって生じた損失等について、ブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。さらに、当資料に記載された市況や見通しは作成日現在のものであり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し、予告なく変更される可能性があります。

弊社が投資一任契約または投資信託によりご提供する戦略は、すべて、投資元本が保証されておりません。弊社がご提供する戦略毎のリスク、コストについては、 投資対象とする金融商品等がそれぞれの戦略によって異なりますので、一律に表示することができません。従いまして実際に弊社戦略の提供を受けられる場合には、それぞれの提供形態に沿ってお客様に交付されます契約締結前交付書面、目論見書、投資信託約款及び商品説明書等をよくお読みいただき、その内容をご確認下さい。

 

© 2024 BlackRock, Inc. All Rights Reserved. BLACKROCK is a trademark of BlackRock, Inc. All other trademarks are those of their respective owners.