
新たな投資のプレイブック
投資テーマ
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01
景気後退を織り込む
中央銀行がインフレを抑え込もうと過度な金融引き締め策を講じることで、景気後退の可能性が高まっているとみています。経済への打撃が織り込まれているか、市場のリスクセンチメントはどうかといった点が重要だと考えます。投資に対するインプリケーション:先進国株式を引き続きアンダーウエイトとしますが、2023年のどこかのタイミングでポジティブに転じるとみています。
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02
債券投資の再考
利回りの向上は、長い間債券のインカムに飢えていた投資家への贈り物だとみています。さらに、投資家は債券のリスクの範囲を大きく変えることなく、それを享受することができるでしょう。投資のインプリケーション:短期国債、投資適格社債、エージェンシー・モーゲージ証券をインカムの獲得機会として選好。長期国債はアンダーウエイトを継続。
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03
インフレとの共存
労働力の高齢化や地政学的な分断など、新たな局面の長期的なトレンドを背景に、インフレ率はコロナ流行前の水準より高い状態が持続すると考えます。投資のインプリケーション:戦術的・戦略的な観点から、インフレ連動債のオーバーウエイトを継続。戦略的には先進国株はオーバーウェイトとします。
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新たな局面の展開
経済活動とインフレが概ね安定的に推移していた40年にもおよぶ「グレート・モデレーション」は終焉を迎えました。マクロと市場のボラティリティが高まる新たなレジーム(局面)が進行するなかで、それは持続するでしょう。中央銀行がインフレを抑え込もうと過度な金融引き締め策を講じることで、景気後退の可能性は増しています。
景気後退が現実味を増すと、中央銀行は最終的には金融引き締めを終了するとみられます。インフレは沈静化するものの、中央銀行の目標である2%を上回る水準が続くと予想します。 インフレ率が市場予想を繰り返し上振れ、債券利回りは上昇し、株式と債券はともに大きく下落しました。こうしたボラティリティの高さは40年にわたる成長とインフレの安定期であったグレート・モデレーションの時代とは対照的です。
この新たな局面の主な特徴の一つは、供給制約の影響を大きく受けるということです。パンデミックによって消費者支出がサービスから財へ移行したことが原因で、物不足と供給ボトルネックが生じました。 人口の高齢化は労働力不足を引き起こしています。つまり、労働力が不足する中で、先進国が以前と同水準の生産を行おうとすれば、必然的にインフレ圧力が生じるということです。こうした理由から生産活動は新型コロナウイルス感染拡大前のトレンドを下回っているにもかかわらず、インフレ率は極めて高水準にあります。
厳しいトレードオフ
中央銀行の金融政策は生産制約を解消する手段とはなりません。影響を及ぼし得るのは経済の需要側だけです。そのため、極めて難しいトレードオフを迫られます。
それは、経済が無理なく生産できる水準まで需要を抑え込みインフレ率を2%の目標まで戻すか、インフレ高進を許容するかのトレードオフです。これまで、中央銀行は前者のスタンスを堅持しています。そのため、景気後退入りの公算が高まっています。実際に景気減速の兆しが出てきています。但し、景気後退が現実となる場合、たとえインフレ率2%への明確な低下軌道を描いていなくても、中央銀行は利上げを終了するでしょう。
生産制約
生産制約はある程度緩和される可能性があります。生産能力を制限し続け、新たな局面を推し進める3つの長期トレンドがあると考えます。
1. 人口の高齢化により、多くの主要国で労働力不足が続いています。
2. 地政学的な緊張が持続し、グローバリゼーションとサプライチェーンの再構築が進んでいます。
3. ネットゼロへの移行により、エネルギー需給のミスマッチが起きています。
過去の成功事例が、現在も有効だとは限りません。
新たなプレイブック
2023年の市場に対処するにはポートフォリオをこれまで以上に頻繁に見直し、新たな指針を持つことが必要です。また、幅広くエクスポージャーを取るのではなく、セクター、地域、サブ資産クラス等に注目しながら、より緻密な見通しを立てることが求められます。 戦術的なポートフォリオにとって最も重要なのは、2つの評価です。一つは市場のリスクセンチメントの評価、二つ目は経済への打撃が既にどの程度市場の価格に織り込まれているのか、という点だと考えています。
シナリオ |
株式 |
クレジット |
短期国債 |
長期国債 |
リスクオフ、経済への打撃が織り込まれていない |
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リスクオフ、経済への打撃が織り込まれている |
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リスクオン、経済への打撃が織り込まれている |
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リスクオン、経済への打撃が織り込まれていない |
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過去のパフォーマンスは現在または将来の成果を示唆する信頼できる指標ではありません。指数に直接投資することはできません。 出所:Blackrock Investment Institute。2022年11月。注記:上記のマトリックス形式における各ボックスは市場のリスク・センチメントまたは景気失速の織り込み度合いに対する見通しを変更した場合に、幅広い資産クラスの戦術的見通しがどう変化するかを示しています。想定される見通しの変更は米ドルを基準としています。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の成果の予測あるいは保証を意図したものではありません。当資料中の情報は、特定のファンド、戦略あるいは証券に関する投資アドバイスとして依拠すべきものではありません。
上の表は新たな局面で市場動向に応じてブラックロックが見通しをどのように変更し、ポジティブに転換するかの基準を示しています。これから導かれる主な結論は以下のとおりです。
- ブラックロックはすでに最もディフェンシブなスタンスを取っています。検討を要するポイントは、特に株式に対するスタンスを強気に転換するかどうかです。
- 現在の新たな局面ではいずれのシナリオにおいても長期国債をアンダーウェイトにします。これは、いずれのシナリオにおいても強い確信を持って言えることです。
- このほか、市場のリスク・センチメントの見通しか、景気後退が価格にどの程度織り込まれているかの見通しのいずれかに応じてポジティブなスタンスに転じる場合もあります。
重要事項
当レポートの記載内容は、ブラックロック・グループ(以下、ブラックロック)が作成した英語版レポートを、ブラックロック・ジャパン株式会社(以下、弊社)が翻訳・編集したものです。また当資料でご紹介する各資産の見通し(米ドル建て)は、米国人投資家などおもに米ドル建てで投資を行う投資家のための見通しとしてブラックロック・グループが作成したものであり、本邦投資家など日本円建てで投資を行う投資家の皆様を対象とした見通しではありません。 記載内容は、米ドル建て投資家を対象とした市場見通しの一例として、あくまでご参考情報としてご紹介することを目的とするものであり、特定の金融商品取引の勧誘を目的とするものではなく、また本邦投資家の皆様の知識、経験、リスク許容度、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的等を勘案したものではありません。記載内容はブラックロック及び弊社が信頼できると判断した資料・データ等により作成しましたが、その正確性および完全性について保証するものではありません。各種情報は過去のもの又は見通しであり、今後の運用成果を保証するものではなく、本情報を利用したことによって生じた損失等についてブラックロック及び弊社はその責任を負うものではありません。記載内容の市況や見通しは作成日現在のブラックロックの見解であり、今後の経済動向や市場環境の変化、あるいは金融取引手法の多様化に伴う変化に対応し予告なく変更される可能性があります。またブラックロックの見解、あるいはブラックロックが設定・運用するファンドにおける投資判断と必ずしも一致するものではありません。
MKTGM0624A/S-3639655
注記:上記の見通しは米ドルベースです。2022年11月時点。当資料は特定の時点における市場環境の評価を示すものであり、将来の出来事の予想または将来の成果の保証を意図したものではありません。読者は当資料中の情報に、特定のファンド、戦略あるいは証券に関するリサーチまたは投資アドバイスとして依拠すべきではありません。